【レポート】県内高校生がフィンランドの大学生とめぐる・まなぶ!小布施町と北欧の環境への取組
2050ゼロカーボンの実現を目指す長野県。欧州にはもっと早いゼロカーボンの実現を目指し、取組を進めている国・地域があります。
その一つがフィンランド・トゥルク市。環境先進都市として気候変動対策に取り組んでおり、2029年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を目指しています。
長野市・小布施町は、欧州連合(EU)が実施する「国際都市地域間協力(IURC:International Urban and Regional Cooperation)プロジェクト」に参加し、トゥルク市と環境に関する交流を行ってきました。
今年9月、トゥルク市と地元企業が提示する「循環型経済」についての課題に対し、大学生たちが解決策を考え、プレゼンし、競い合うプログラム「サーキュラー・エコノミー・イノベーション・キャンプ」を実施。そこで優勝した大学生3名が、IURCに参加している長野市・小布施町を訪問することになりました。
くらしふと信州では、環境問題に関心のある長野県内の高校生も現場で学び、交流することで、ゼロカーボン(気候変動対策)の理解を深めることを目的に、小布施町を一緒に視察・交流するプログラムを企画。
県内からは
松商学園高校 文理コース1年 田中舞さん
伊那北高校 普通科2年 大槻楓さん
の二人がこのプログラムに参加してくれました。
トゥルクからは、トゥルク大学、オーボ・アカデミー大学、トゥルク応用科学大学の学生3名が来日。
10月19日(木)に小布施町で集合し、まずは、気候変動の影響で近年増加している災害に対して地域の人たちの力で復旧できるような人材育成とコミュニティづくりの場である災害アミューズメントパークnuovoを見学。
次に、松川小水力発電所を見学し、地域の小さな川のエネルギーを活用して300世帯の電力を賄う民間事業の取組を知るとともに、騒音や川の水質等の課題についても学びました。
花や栗が有名な小布施ならではの地域資源を循環させる取組として、フラワーセンター木質バイオマスボイラー、剪定枝・栗イガ炭化事業などの現場も見学しました。
最後に小布施中学校を訪問。探究学習の一環として、SDGsを学ぶ1年生と交流を行いました。授業の冒頭、トゥルクの大学生からは「サーキュラー・エコノミー・イノベーション・キャンプ」で優勝したアイデアについてプレゼンしてくれました。
まず、トゥルク市の職員さんが、2029年までにゼロカーボンを目指すトゥルク市では、2022年までに1990年比ですでに二酸化炭素排出量を56%削減していること、人口当たりの二酸化炭素排出量がフィンランドの主要都市の中でも一番低いことを教えてくれました。
次に、ゼロカーボン・サーキュラーエコノミー実現に向けて、学生3人が考えたアイデアとは…
トゥルクのとある地区では、観光客向けの公共トイレが街中に少ないという衛生面での課題があるとのこと。その解決方法として、フィンランドの夏に別荘として使われる“サマーコテージ”から着想したおしゃれで水を使わないバイオトイレを木材でつくり、街中に設置。集まった排泄物でバイオガス発電し、街中の公共交通機関などの電気をまかなっていくことで、地域にある資源をうまく循環させていくというアイデアでした。
観光客にフィンランドのサマーコテージ文化を体験してもらい、地域の衛生的な課題解決もしながら、サーキュラーエコノミーにつなげていく。複数の課題解決と新たな価値創出を掛け合わせているというアプローチは、とても大事な視点でした。
では、小布施町でトゥルクの大学生と一緒に過ごし、交流した高校生2名はいったいどんなことを感じたのでしょうか。
<松商学園高校 文理コース 1年 田中舞さん>
今回のくらふと信州ユースプログラムに参加してみて、自分の視野が広がったと感じています。小布施町を視察する中で取り組みの多くが地域のものを活用して二酸化炭素削減などの環境対策をしている印象でした。 また、中学校を訪問した際に聞いたフィンランドのトゥルク市の大学生の方々のプレゼンは、フィンランドのサマーハウスのトイレから発想を得て豊かな自然を守っていくことや、温暖化を最小に抑える対策などを考えており、身近にあるけど気づかないようなところに着眼点を置いていることに驚きました。 全体を通して、環境対策がSDGsにも関係していると気付き、環境問題といえば地球温暖化というイメージでしたが環境対策は身近なものだと実感しました。国際交流として、フィンランドの方々と話すことを通じて、環境問題を多方面から考えることができ、とても貴重な経験ができたと思います。 |
<伊那北高校 普通科 2年 大槻楓さん>
自分のこれからに活かせるなと思ったことをたくさん学ぶことができた1日でした‼︎ なぜそう感じたかというと、その大学生の方々はフィンランドの伝統的な生活スタイルや地域の企業などから着想を得て、使用する水の削減を取り組むことを提案する発表をしていたのですが、それがその地域に合ったその地域の学生じゃないと気がつけないような点で解決策を見出していたからです。学生が1番地域のことに気がついて利用ができる立場なのかなと思いました。 この気がついたことを忘れずに、自分の探究にも地域性を取り入れたいです。 |
小布施町での取組に対する発見はもちろん、やはりフィンランドの大学生のプレゼン内容や行動力に二人とも刺激を受けたようです!
世界共通の課題だからこそ、国を超えて学び合えることがありますし、他国での取組を聞くことで、自分の地域の足元を見つめ直すきっかけにもなりますね。まさに“くらしふと”!。
彼らの今後の活動・活躍に期待したいです。