【レポート】観光×脱炭素で地域活性化を目指そう!~北信州ゼロカーボンミーティング~
令和5年12月13 日、山ノ内町で「ゼロカーボンミーティング in 北信州~観光×脱炭素~」が開催されました。
北信州エリアは、スノーリゾートやグリーンシーズンのアクティビティなど、国際的にも知名度が高く自然豊かな観光地を数多く有しています。
また近年、自然や環境に配慮した持続可能な観光、いわゆる「サステナブルツーリズム」の志向が高まっており、こうした背景から、サステナビリティや脱炭素への取組みを観光地としての魅力向上にもつなげるため、ミーティングのテーマが「観光」と設定されました。
当日は総勢およそ80 名の方に参加いただき、会場となった山ノ内町文化センターが満員状態に。地域におけるこのテーマへの関心の高さが伺えました。
会のはじめに、主催者の長野県北信地域振興局 小池広益 局長から
ゼロカーボン社会は県だけで実現できるものではなく、事業者、県民の皆さまそれぞれに具体的な行動に移していただくことが不可欠、このミーティングが自然豊かな観光地を有する北信地域において、新しい行動が始まる機会となれば幸いです、と挨拶がありました。
続いて、共催者の山ノ内町 平澤岳 町長から、町の友好都市であるベイル町(アメリカ合衆国コロラド州)で出席した、全米の山岳自治体やスキー場関係者などが集まる環境会議での様子から、
非常に環境への意識が高く、今アクションを起こさないと間に合わないという危機感があった。今、観光地を選ぶ際には、そこが環境に配慮した町であるかが問われる時代である。町としても令和5年9月に宣言を行い『ゼロカーボンシティ』を目指す中で、皆さんと勉強しながら、町の価値を高め、お客様に選んでもらえるような町づくりをしたい、とご挨拶をいただきました。
講演では、黒川温泉観光旅館協同組合の北山元 事務局長と、株式会社JTB 企画開発プロデュースセンター/内閣府地域活性化伝道師の曽根 進 氏からお話をいただきました。
北山氏からは、「黒川温泉 2030 年ビジョンの取り組みについて」と題し、
熊本県南小国町にある黒川温泉では、熊本地震やコロナ禍による観光客の激減を機に、地域で話し合い、2020年から地域内経済循環型モデルに転換していることや、
地域の経済と資源、2つの循環を意識した温泉地づくりを推進する「黒川温泉2030年ビジョン~世界を癒す、日本里山の豊かさが循環する温泉地へ~」を策定し発信したこと
について、お話をいただきました。
また、ビジョンの具体的な取り組みとして、旅館の生ごみををたい肥化し野菜栽培に使用したり、料理で提供する「黒川温泉一帯地域コンポストプロジェクト」等を紹介いただきました。
北山氏の講演の中で「企業、大学、行政など関係機関と連携し、豊かな地域資源を活用・循環させることで、環境・経済・人々の幸福につながるサステナブルな温泉地を目指したい」という発言が印象的でした。
続いて曽根氏からは「観光の視点から考える脱炭素」と題して講演いただきました。
はじめに、脱炭素と観光の潮流について、
観光関連に起因する温室効果ガス排出量は全体の約8~11%、環境負荷の増大が問題視されていることや、
近年、旅行者の意識も変化し、世界では約8割の方がサステナブルな旅行を希望していること、
温泉旅館は空調・給湯に係るエネルギー需要が大きく、一般家庭の約10倍。コロナ明けの観光需要回復とエネルギー価格高騰により、脱炭素化対策の必要性が高い業界であることをお話しいただきました。
続いて、脱炭素と地域活性化の関係について、
地域が脱炭素に取り組むことで、経済波及効果、ブランド価値価値向上、観光客数増加等の効果が見込め、雇用増・産業再生・循環経済により地方創生につながること、
「脱炭素」は多くの分野(観光、教育、農林業、交通、防災…)との政策連携が可能であること
脱炭素を目的化せず、脱炭素×〇〇で政策として考える必要についてお話をいただきました。
最後に、 小さなことでも、明日から脱炭素アクションを意識した行動にトライすることの大切さを教えていただきました。
参加者からは「地球レベルの活動を地域で取り組む理由について、わかりやすい説明が聞けた」「温泉地での取組が参考になった」などの声が聞かれました。
今回のミーティングが「観光」に関心のあるみなさんにとって、ゼロカーボンや地域活性化の新たな取組につながる機会になったのではないかと思います。